天井クレーンレール修正(修理)に関して

ある工場様から、異音がするとのご相談があり、調査をさせて頂いた時の事を今回は紹介させて頂きます。天井クレーンをお持ちの企業様の、今後のご参考になればと思います。

これがレール接続板(ペーシーモールと一般的に言います)を外した時の画像です。これ以降の画像は、『今は急には操業が止められない』という工場様の意向もあり、応急処置をした際の事をご紹介します。

その後すぐ、2日間連続して工場様がお休みの際に、レールを新品にお取替させて頂いておりますのでその点はご安心して見て頂ければと思います。

当初、異音がするとおっしゃられる箇所を高所作業車を使用し、撮影した時の画像です。

本来、天井クレーンにも【トップランニング形】【サスペンション形】など形状が多数あります。重量の大きな物を吊る工場様は基本【トップランニング形】が多いです。その中でも、【軌条形サドル】を採用される天井クレーンが多いと見受けます。これは電車と同じ理屈で、レールの上をサドル(車でいうとタイヤ)で走行しております。レールとレールを繋げる接続方法も特急電車等のレールと同じで、接続板でレール同士を繋ぎながらレールを伸ばしていくのが基本です。今回はごく一般的なレールです。

繋ぎ目は写真左側の真っすぐな切れ目が正規な状態の繋ぎ目です。それに対し、なぜか写真中央付近にギザギザした切れ目がある事が判るでしょうか?弊社は長年に渡り、レールの修理や取替、レベルの修正に携わってきましたので、見た瞬間に割れてるなと判断致しました。

手で掴んで持ち上げただけで取れてしまいました。さすがにこんな状態の例はなかなか見受けないのですが、ただ単に接続板の間に挟まっていただけで、この状態で天井クレーンが走行を繰り返していた事になります。

本当に危険な状態だったと今回ばかりは感じました。

本来、天井クレーンをお持ちの工場様でも、レールに関しては自社で上に上って確認する機会はなかなかないでしょうし、不具合に気付かれない事も多いです。レールに関しては定期的な検査義務もありませんので、細かく調査していく行為をされておられる工場様は本当にごく稀だと思います。

周りの粉塵やグリスを除去し、きれいにした最初に掲載した画像です。割れ目や亀裂を白い線でなぞっています。これを見ても判るようにその部分だけでなく、他まで(広い範囲)影響が出てしまっているのが、今まで経験した中で普通に多いです。

【応急処置しか今はできない状況】でしたので、亀裂部にグラインダーで開先を作り、低水素系の溶接棒を使用し割れ目や亀裂部分を溶接補強しました。見える手前だけでなく、奥側も同様に溶接してあります。

補足として、レールの専門的な溶接方法は基本4種類(エンクローズ溶接法など)あります。が、それは体勢の良い地上で、なおかつレールに対し専用設備を完璧な状態に設置した場合のみ出来る溶接方法だと私自身は思っております。新幹線レールなどは繋ぎ目の無いようにしなければならないので、そういった専門的な繋ぎ方(溶接)をしています。

中央付近などに見える板はライナーと言いまして、レベル修正した際などに出来る、レールとランウェイガーダーの隙間に差し込んみ、支え(束)になるような役割を果たします。

レールの天端も肉盛りを多層盛し、グラインダー研磨で平らに仕上げて隣のレール天端と段差の出来ない様にしました。

段差も大きな衝撃音に繋がる要因の一つですので、ご参考までに。

応急処置として新品のレール接続板に取替とライナーも1箇所追加させて頂いております。

レベル修正をしてあるレールは、どうしても繋ぎ目付近で荷重の負荷が大きく掛り、画像のようなレール固定方法(フックボルト)の穴から亀裂などの欠損が起こる事が多いです。

レールをその場(その位置)に固定する方法も何種類かありますが、その全てに共通して言える事は、【建築基準法やJIS規格】で決まっている事はありません。構造強度計算をし、安全面でクリアしているといったところでしょうか?しかしそれも永久でもなければ、繰り返し荷重における不測の事態も起こります。建物の地盤沈下などによるレベル(高さ)変化も天井クレーンには大きく影響します。

軌条形天井クレーンをお持ちの工場様のその大半が、レールにキリ穴をあけ、画像の様にフックボルトで固定されておられるのがほとんどではないでしょうか?初期費用も抑えられ、メンテナンスも取替も容易である理由で多く使われておりますが、これが悪いという訳ではありません。これも一つの正解です。最近ではウレタン製の【無軌条形サドル】を使われる事も多くなっておりますが、比較的、軽重量の吊り荷を扱う工場様向けです。

最初にも記載しましたが、この応急処置のすぐ後の2日間連続して工場様がお休みの際に、新品のレールと取替をさせて頂いておりますのでその点はご安心下さい。

今回は掲載した理由は、皆さまの災害を未然に防止、又は生産に打撃を与えない様にと、こういった事例もあるというご参考にして頂ければ幸いです。

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